決断の前に、言葉にできる時間を
若手の社長が、こんな話をされていたことがあります。
「専務には、もう少し共有してほしいと伝えているんです。
でも、言われたことは共有している、と言うんですよね。」
社長としては、もう一歩踏み込んでほしい。
けれど、ナンバー2である専務の方からすると、言われたことはきちんとやっている。
そんな、どこか噛み合わないやり取りでした。
その社長は、最後にこう言われました。
「そのうち分かってくれると思うんですけどね。」
あきらめ、とまではいかない。
けれど、どこか距離を置いたような響きがありました。
親から会社を継いだ立場。
ナンバー2は年齢も経験も上。
強く言えないわけではない。
けれど、どこか遠慮がある。
そんな関係の中で、少しずつボタンが掛け違っていく。
その様子を見ながら、私は「もったいない」と感じていました。
言葉になっていないまま
経営の現場では、こうしたことがよく起こります。
共有しているつもり。
伝えているつもり。
けれど、真意までは伝わっていない。
それでも日々の業務は進み、
新しい判断も求められます。
本当は、もう少し話せば整理できること。
もう少し言葉にできれば、見えてくること。
そうしたものを抱えたまま、
次の決断へと進んでしまうことも少なくありません。
言葉にできる時間
経営では、決断の場面が続きます。
システムやツールの導入。
事業の方向性。
人の配置。
経営計画。
どれも、正解が用意されているものではありません。
だからこそ、
決断の前に、思考を言葉にできる時間が必要になるのだと思います。
誰かに説明するためではなく、
まずは自分自身の中にある考えを、言葉として外に出してみる。
そうすることで、見えてくることがあります。
経営は、ときに孤独です。
けれど、その孤独の中で抱えているものを
言葉にできる時間があるだけで、
判断の質は大きく変わるのではないでしょうか。
決断の前に、言葉にできる時間を。
引き継いだ立場で経営を担うとき、
ふと、ひとりになる瞬間があります。
そんな時間について、これまでにも書いています。