動き出すのは、誰だろう

経験を重ねるにつれ、以前は捉えにくかったことにも、見通しが立つ場面が増えてきました。
相談の背景にある問題や、解決へ向かう道筋。
相手の話を聴いているうちに、次に何を伝えるかが浮かぶこともあります。
けれども最近、ふと、こんな思いが湧いてきました。
見えるものが増えるほど、かえって見えにくくなるものもある。
私は今、相手の何に目を向けているのだろう。
自分が大切にしてきた姿勢で、今も人や組織と向き合えているのだろうか、と。
役に立とうとするうちに
この10年ほどで、私が関わる分野の技術は大きく進歩しました。
組織が抱える問題も複雑になり、
専門的な知識や具体的な提案を求められる場面が増えています。
期待に応えたい。
目の前の問題を、少しでもよい方向へ進めたい。
そんな思いから、説明や提案に力が入ることもあります。
もちろん、それも専門家として果たすべき役割のひとつです。
ただ、答えを考えることに意識が向きすぎて、
気づけば、相手が向き合っている問題を自分が解こうとしている。
振り返ると、思い当たる場面が浮かんできます。
久しぶりに、10年近く前に出会った一冊の本を開いてみました。
コンサルティングへの関心を深めるきっかけとなった本です。
読み返すうちに、かつて心に残った支援の姿勢を、今の経験と重ねながら考えていました。
成果の、その先に
専門家として知識を伝え、具体的な解決策を示す。
目の前の問題が解決に向かえば、それも確かな成果です。
ただ、私が見届けたいのは、その先にある変化です。
相手が自ら考え、選び、動き出すこと。
組織の中で新しい動きが生まれ、少しずつ変化が広がっていくこと。
そこに至る道のりは、思い描いたとおりに進むとは限りません。
自分が関わったことを覚えていてもらえたら、もちろん嬉しいものです。
けれども、いつかそんなことさえ忘れてしまうほど、自然に動き続けている。
そんな姿に出会えることが、私にとっては何より嬉しいのです。
もう一度、自分の立ち位置へ
必要なときには、知識や経験を惜しまず差し出す。
一方で、相手自身が考える時間を大切にし、そこから生まれる答えを尊重する。
どこまで伝え、どこから相手に委ねるのか。
その見極めに、これからも迷うことはあるでしょう。
けれども、迷ったときに立ち返る場所が、今の自分にはあります。
自分が何を成し遂げたかよりも、相手の中に何が生まれたか。