推進者は、ひとりでは育たない

推進する人を決める。
担当者を置く。
ツールの使い方を学んでもらう。
それは、組織の変化を進めるための大切な一歩です。
けれど、それだけで、変化が進むわけではありません。
任せれば進む、とは限らない
推進する人は、
ただ決められたことを進めるだけの存在ではありません。
経営が何を変えたいのかを受け取り、
現場で何が起きているのかを聞き、
数字を見ながら、対話を重ねる。
その中で、
何を問題として捉えるのか。
どこから手をつけるのか。
誰と一緒に進めるのか。
そうしたことを、一つずつ見立てていく必要があります。
けれど、それを推進する人だけに委ねてしまうと、
変化は個人の力に依存してしまいます。
推進が進まない理由を推進する人の力量だけに求めてしまうと、
組織として見直すべきことを見落としてしまうことがあります。
ツールの前に、変化の道筋を描く
ツールは、変化を支える手段になります。
業務を見える化する。
作業を効率化する。
情報を共有しやすくする。
判断の材料を増やす。
そうした役割がある一方で、
導入する前に考えておきたいことがあります。
何を変えたいのか。
なぜ変えたいのか。
どの現象を、どのような問題として捉えているのか。
その変化を、誰と進めていくのか。
そこが曖昧なままでは、
ツールは入っても、組織の動きは変わらないことがあります。
推進する人に必要なのは、
ツールを使いこなす力だけではありません。
経営の問いと、現場の声。
数字で見えることと、対話で見えてくること。
それらを行き来しながら、変化の道筋を描いていく力です。
孤立すると、推進は続きにくい
推進する人は、組織のあいだに立つことが多くあります。
経営からは、成果を求められる。
現場からは、負担が増えると言われる。
部門ごとに、見えている景色が違う。
一方で、具体的に何を変えるのかは、まだ曖昧なまま。
そのような状態で、一人だけが前に進もうとしても、
推進は続きにくくなります。
いつの間にか、ツールの担当者になってしまう。
調整役だけを担うことになる。
現場との板挟みになる。
本来は、組織として進めるべき変化が、
いつの間にか、推進する人個人の努力や熱意に
支えられてしまうことがあります。
それでは、推進する人も、組織の変化も、
長くは続きません。
育つ場をつくる
知識を学ぶことは必要です。
ツールを使えるようになることも大切です。
けれど、推進者が育つには、それだけでは足りません。
推進者を育てることは、
本人の学びに委ねることだけではありません。
経営として問いを示すこと。
優先順位を伝えること。
現場と向き合える場をつくること。
小さく試し、振り返る機会を重ねること。
そうした場の中で、
推進する人は少しずつ育っていきます。
本気で変化を進めたいなら、
「誰に任せるか」だけでなく、
「その人が育つ場を、どうつくるか」にも目を向ける必要があります。
推進者を支えることは、
経営として、変化への関わりを手放さないことでもあります。
推進者を育てることは、
ツールに詳しい人を増やすことではありません。
経営の問いを受け取り、
現場の声を聞き、
数字と対話を行き来しながら、
変化につながる見立てをつくっていく人を育てること。
そのような人が育つ場をつくることが、
DX推進を、単なる導入や効率化で終わらせないために
必要なのではないでしょうか。